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東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)62号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔編注〕一 特許庁における手続の経緯

原告らは、昭和三二年一二月七日、名称を「輻射バーナー」とする考案について実用新案登録出願をしたところ、昭和三四年六月一七日拒絶査定を受けたので、昭和三四年一一月二四日抗告審判を請求し、同年抗告審判第二七一六号事件として審理されて、昭和三八年一一月四日出願公告がされた(実用新案出願公告昭三八―二三二八三号)。これに対し、昭和三八年一二日七日早川電機工業株式会社から登録異議の申立があり、さらに審理の結果、昭和四一年一二月二六日、右登録異議の申立は理由がある旨の決定とともに、「本件抗告審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は昭和四二年一月二一日原告らに送達された(出訴のための附加期間三か月)。

二 本願考案の要旨

角皿状の火口枠1の上面開口部に上下面に連通する多数の小孔2を透設した耐火物製の盤体3を嵌着し、さらに該盤体3の少許上方の燃焼ガス焔によつて直接加熱されることのない位置において耐熱性の金網4を一帯に張設し、また前記火口枠1内に設けられて先方開口部6を盤体3の下部に連通させた混合室5の基端部にはホースエンド取付口7を設けるとともにダンパー9付の空気口8を設けた輻射バーナーの構造。

〔判決理由〕二 原告らは、まず、第一引用例(フランス特許第一、一一〇、一六五号明細書)記載の輻射バーナーにおけるガス配分壁3(盤体)と第二引用例(アメリカ特許第二、七七五、二九四号明細書)記載の輻射バーナーにおける盤体(本願考案における盤体3)とは構造と機能を異にし、異なる技術思想に基づくものであるから、本件審決が、本願考案は第一引用例記載の輻射バーナーのガス配分壁3を第二引用例記載の輻射バーナーの盤体に置き換えるか、または第二引用例記載の輻射バーナーの盤体の上方に第一引用例記載の輻射バーナーのスクリーン2を設けたものに相当し、このようにすることは単純な設計変更にすぎないとしたことは、認定を誤つたものである旨主張するが、この主張は理由がない。すなわち、本願考案の輻射バーナーにおける盤体3は第二引用例記載の輻射バーナーの盤体と同じものであり、原告主張のような熱抑止手段によつて無焔燃焼するものであること、第一引用例記載の輻射バーナーにおけるガス配分壁3(盤体)は熱抑止手段を講じていないため逆火の危険があり、したがつて有焔燃焼のものであること、右いずれの盤体においても、その上方にスクリーン(金網)を張設するか否かは輻射バーナーとしてのガスの燃焼それ自体には影響のないものであることは、いずれも当事者間に争いのないところである。そして、本願考案の出願公告公報及び第一引用例によると、第一引用例の輻射バーナーにおいて盤体の上方に一帯に張設された多孔スクリーン(金網)は、燃焼ガス焔によつて白熱されて輻射熱を発し、この輻射熱はスクリーンの外面から外部に向つて放射されるとともに、内面から燃焼室内へ反射して燃焼室内の温度を高め、盤体から発する輻射熱を増大させる作用をするものであること、本願考案の輻射バーナーにおいても、盤体の上方に一帯に張設された金網は、盤体から発する輻射熱により赤熱状態となつて輻射熱を発散し、盤体の発散する輻射熱に加わつて、強大な輻射熱を発散することになるという作用をするものであることを認めることができる。したがつて、輻射バーナーにおいて、その盤体が有焔燃焼のものであつても、無焔燃焼のものであつても、盤体の上方に一帯に金網を張設するときは、ひとしく輻射熱を増大させるという効果を奏するものであることが明らかである。してみると、第一引用例において開示された、有焔燃焼の輻射バーナーにおいて盤体の上方に一帯に金網を張設して輻射熱を増大させるという技術思想を第二引用例の無焔燃焼の盤体に応用して熱効率を上げることは、同じく輻射バーナーである以上他にこれを妨げるべき特段の事情が認められないかぎり、当業者の容易になしうるところと認めるのが、経験則上相当というべく、右特段の事情は、本件の全証拠をもつてしても認めるに足りない。したがつて、また、第一引用例の輻射バーナーにおいて、その有焔燃焼の盤体を第二引用例の無焔燃焼の盤体をもつて置換えることについても、同様に当業者の容易になしうるところといわざるをえない。これらの点に関する本件審決の認定判断は正当であり、単に第一引用例の輻射バーナーの盤体は有焔燃焼のものであり、第二引用例の輻射バーナーの盤体は無焔燃焼のものであることを理由に、その相互置換の可能性を否定する原告らの主張は理由のないものである。

三 次に、原告らは、本願考案の輻射バーナーは単に第一引用例及び第二引用例各記載の輻射バーナーを総合しで考えても、これから予測される以上に優れた特段の作用効果を奏するものである旨主張するが、これまた理由がない。けだし、本願考案の輻射バーナーは第二引用例の輻射バーナーの盤体の上方に耐熱性金網を一帯に張設したものであることは、当事者間に争いがないところであるが、輻射バーナーにおいて、盤体の上方に金網を一帯に張設するときは、熱せられた金網の発散する輻射熱が加わつて、熱効率が増大されるという効果を奏するものであることは、第一引用例に示されていること前記認定のとおりであるから、本願考案の輻射バーナーの輻射熱放射効果は、ひつきよう、第二引用例の輻射バーナーが本来備えていた輻射熱放射効果に、右第一引用例に開示された技術思想により、金網が増大すべき輻射熱を付加した範囲内のものに止まるというべきものであつて、それ以上に、第一引用例と第二引用例とに示された技術思想を総合して予測される程度をこえるものではないといわざるをえないからである。

四 以上のとおり、本件審決に原告ら主張の二点において認定判断を誤つた違法はなく、ガス器具において空気口にダンパーを設けることが慣用手段であることは原告らの認めて争わないところであるから、本願考案をもつて、第一引用例及び第二引用例記載の輻射バーナーから容易に推考しうるものとして、その登録要件を否定した本件審決は正当というべきである。よつて、その取消を求める原告らの本訴請求を理由なしとして棄却すべきものと認め、主文のとおり判決する。

(青木義人 石沢健 宇野栄一郎)

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